aikokuken-ryuji 日々の草稿

日々aikoku=愛国.音楽大好きな犬=ken@10年20年もっと後の日本に世界に平穏あれ。

『絶対正義』と『絶対悪』についての超短編小説📖

皆様、こんばんは。aikokuken-ryujiです。

今回のブログは、前回の最後に書いた、仏教的な内容のブログを  と、考えておりましたが、ある事情で前言を撤回させていただき(男らしくねぇ...😩💧)、表題にありますように超短編小説的なものを思い付いたまま書かせていただきます。

 

まことに、申し訳ございません...m(_ _)m

 

もちろん、小説の類いなるものなので創作と現実の僕の気持ちを混ぜ合わせたものとなります。

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『梅雨時』

 

本木公二は、またも夜の街を徘徊(うろつ)いていた。

何か、眠れぬらしく自家の床の上に寝そべっても目がさえるばかりでどうしようもないので、横で静かな寝息をたてて寝ている細君を起こさないよう細心の注意を払って、玄関の戸をなるだけゆっくりと開け、閉める時も極力はでな音をたてずに閉め、外に出たとしても家を離れる際、履いている下駄の音にも気を使いようやく住宅街から離れ、商店街に続く一本道に躍り出たところであった。

20分ぱかし歩いたところで、本木氏は様々な光景を目にした。

本木氏がただ歩いていると、後ろから車がやってきて、自分を追い越す時に余程近かったのか、右腕にバックミラーが  がん  と当たり、それでもドライバーは知らん顔して行き過ぎていった。

尾灯(テールライト)の明かりで、ドライバーが女だとわかり、本木氏は  「ちょっ」  と不機嫌そうに舌打ちをしただけでその場をやり過ごした。

あと、若い恋人同士であろう若い男女が、自転車を走らせながら横に並んで会話をしているのを見た。

一本道は、そう太くもないので、後ろからきた車は少し立ち往生していた。

それでも若い男女は、避けようともせず楽しそうに会話をしながら自転車をのろのろ走らせていた。

本木氏は、学校の教諭でもないので、それでいて社会事業者でもないものだから、「君たち、自転車に乗りながらの会話は危険だよ。会話に気をとられて運転を過り、自分達や歩行者に危ないじゃないか」と一声かける道理も見出だせぬまま、じっとその様子を凝視していた。

かく言う本木氏は、今そんな他人にかまっていられるほど余裕のある精神状態ではなかった。

彼は売れない作家であるが、4日前にやっとテーマが決まり新作に取りかかろうと筆をとったところ、書き出しの部分がいっこうに書けないでいる。

テーマは「絶対正義と絶対悪」。

はてさて、この途方もない大きなテーマについてどう書こうか。すべては書き出しいかんで決まる。

書き出しが月並みやつまらない文章であったなら、読者は喰いつくまい。

いや、最初の二、三行読んだだけで飽きられて本棚にもしまわれず、部屋の片隅に放りっぱなしにされるのではないか...。

本木氏は、売れない作家ではあるのだが、そこのところが妙に物書きのプライドたる考えをもっているのであった。

 

しばらく歩いていると、本木氏は商店街に出た。

いつも見慣れてる店、道、街灯、ゴミ箱の位置などそれらはすべて頭の中に入っている。

思い出しただけで嘔吐を催しそうだ、、本木氏はそう思うくらいにこの街には長く住んでいる。

馴染みの商店街。よく酒を飲みにふらりと足を向けたものだ。

しかし、彼は飲み屋には入らず、コンビニで安酒を買い、夜風に浸りながら一人酒を飲むのを好んだ。

その方が安くつくし、なまじ一人身で飲み屋などに入り酒を飲んでも、高くつくばかりで気持ちが鬱屈としてくるのをつまらなく思ったからである。

物書き特有の孤独感というか、いや、人間誰でも独りになって考えたいと思う時が人生には何度かあるのだ。

本木氏も今は独りでいたい。悩みの相談など細君がいるのだから、いくらでもできるだろう  というのは青臭い純粋な異性との交際まだ浅い若者の考えにすぎないだろう。

夫というものは、そうみだりに妻に泣きすがったり、軽々しく悩みを打ち明けたりしないものだ。

悩みがあったとしても、妻にはグッと口をつぐみなんでもないフリをしようとする...一種、それが男のプライドたるものだと本木氏も例外なく抱懐していた。

 

本木氏はコンビニで安酒を買い、少しのつまみにとチキンもつけてもらい、店先でチキンを狂ったように頬張ると、酒を片手にコンビニを離れた。

ふと、薬局の軒下に来た。本木氏はどすん  とシャッターの前に座り込み、存分に酒を飲み、五臓六腑に隅々まで沁みわたらせた。

だんだん酔ってくる......頭がなんだか軽く感じられ、目がまばたきする毎に浮いてくるのがわかる......。

ふと、商店街に入る前の、いつも煙草を買っている煙草屋に通りかかった事を思い出す。

夜も遅いので、当然閉まっている。

二階の窓も閉まっている。月灯りに照らされて雨戸の光沢が妙に不気味だ。

そうだ、今は梅雨時なのだ。

しかし、雨はあまり降らない。今年も空梅雨なのか。

「絶対正義と絶対悪」についての思索をめぐらせている間も、原稿の前で苦しみながらもふと窓外を見つめ、雨じゃない......と気持ちを寄せた事もあった。

 

そもそも何故、本木氏は絶対正義と絶対悪についての小説を書こうと思い立ったのか。

それは、この世の中、絶対正義というものは無くてはならない心持ちだが、最近、絶対悪  という心持ちのある人間がさっぱりいなくなってしまったのだという事に気づいた。

絶対正義  は、何の見返りも報酬も求めない。一種のヒロイズム的な日本人のこころの奥底に眠る民族性といったものがそうさせているのだろうが、それに対する絶対悪  というものが今の世間には見当たらない。

現根の悪は、絶対的に「悪」にはなりきれず、悪を行使した暁にはそれなりの見返り、報酬が必ずある。

正義  という定義に生きる人たちの立場と悪  という定義に生きる立場。

それは寸分変わりないものだと。

しかし、「絶対」という文句が先立って修飾されると、それは悪  の立場にはもう無いのだと。

悪  は必ずしも自分の立場が 悪  であると思ってはいない。

正義から見る悪は、自らが正義だと思い込んでいる。

そこが些か厄介なところである。

本木氏も、そこに多少なりの瑕瑾(かきん)を抱き、今夜も自家で筆をとるには精神的に慮(おも)んぱかるところが発生し、こうして憂さ晴らしに夜の街をぶらぶら歩いているのだ。

一体、正義とは、悪とはなんなのか......。

 

正義は、正義であって昔のような『勧善懲悪』とかの思想や歴史があるが故に信用できる産物として人々にも理解できるのだが、悪が自分たちが正義と唱えると、それは悪でなく正義という立場で、一般定義の正義に抗うものになってしまうのか......。

そこで、本木氏は停頓してしまった。

 

彼の住む街には、多くのアジア系の外国人が我が物顔で住んでいる。

彼らは選挙権もない。いつ、どこからやってきてある日突如として日本に住みつくようになったのかも判然としない。

同時にこの国に無条件で住む資格があるのか、ないのかはそれはわからないが、少なくとも彼らが正義か悪かと問われれば、本木氏は正確な答えを見出だせないであろう。

今、正義と悪の思考の軋轢の只中にある彼には、その判断ができかねる心中にあるのだろう。

本木氏は、飲んでるうちに用を足したくなった。

しかし、公衆便所が近くにないので、仕方なくその辺ですることにした。

出物腫れ物......という諺があったなァ  と朧気な頭に浮かべながら放尿を終え視線を逸らすと、 Alley (路地裏)からもれる一筋の灯りが彼の目にとまった。

ふと、その寸分の隙間を一人の少女の影が横切った。

少女は、眼鏡をかけていて鞄を大事そうに抱えながら足早に消えていった。

もう片方の手には、ビニール傘を持っていたのもみとめた。

そうだ、梅雨時なのだ。

しかし、雨はあまり降らない。この矛盾が、本木氏の行き詰まる『絶対正義』と『絶対悪』の拮抗と似たような感慨を持たせるのだった......。

 

本木氏は、体はじゅうぶんに酔っているにも拘わらず、はっきりとした意識を閃かせながら、ゆっくり、、本当にゆっくりと足を歩ませながら愛しい細君の眠る自家へと歩き出した。

危ぶまれる帰路の中途中途で、下駄をカラコロいわせながら、本木氏は未だ雨の降りそうにない空に向かって一瞥を不穏そうに投げ掛けた。

 

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以上で初の短編的小説を書かせていただきました。

なんだか、終わりが中途半端な感じになってしまい、すみません💦

テーマに掲げた『絶対正義』と『絶対悪』についての言及は敢えてしないでおきます。

それぞれ、皆様のお考え次第におまかせしたいと思います。

突然の拙作を披露してしまい、まことにすみませんでした。

 

終わりまで読んで下さった方に、感謝申し上げます。

おやすみなさい。

 

                                @2677/ 7/ 11/ 草稿